固形食品による消化管アレルギー


 消化管アレルギーの中には、鶏卵や米、小麦、大豆、魚貝類など固形食品が原因で発生するものがあります。当然のことながら、離乳食開始後の乳児や幼児、小児に発生します。比較的まれですが、成人に発生することもあります(→成人の消化管アレルギー)。

 海外では2000年以前から散発的に少数例の報告があり、2003年に小規模なまとまった報告がなされています。2010年以降は国単位の規模の大きな研究報告が相次いで発表されました。その結果、原因食品は国別に異なることがわかりました。アメリカやオーストラリアでは米の頻度が最も高く、イギリスやイタリア、スペインでは魚類が最も頻度が高いと報告されています。

 わが国では、2009年に、米が原因の消化管アレルギー症例が3例報告されています。その後、あさりが原因の症例が、散発的に数例報告されています。その他、まれに、しじみ、そば、大豆、うずら卵などが原因の症例が報告される程度でした。

 そのような中で、2018年(平成30年)より急に固形食品による消化管アレルギーの症例報告が増えてきました(図1)。その契機になったのは鶏卵の卵黄による消化管アレルギーの発見です(→卵黄による消化管アレルギー)。それ以降、他の固形食品による消化管アレルギーにも目が向けられるようになり、全体的に報告数が増加しつつあります。

  図1.わが国の固形食品による消化管アレルギーの報告数   
     
     


 最近、消化管アレルギーの原因食品の頻度について、他施設共同で、固形食品と牛乳を同時に調査した報告がみられるようになりました。2020年の報告では、牛乳による患者が最も多く、卵黄が原因の患者は、その1/2~1/3程度とされていました(武村 豊、他、第57回日本小児アレルギー学会)。

 これが2021年の報告では大きく変動し、卵黄が原因食品の第1位になりました(図2)。同様の知見は、他の施設からも報告されており、卵黄が消化管アレルギーの最大の原因食品となったことは、ほぼ、間違いないようです。

  図2.消化管アレルギーの原因食品別患者数   
     
   (林 大輔、他、第70回日本アレルギー学会、2021)  

 消化管アレルギーの原因食品の中で、このように卵黄が圧倒的に多いという現象は、他の国には見られず、わが国固有の顕著な特徴と言えます。

 発症時期については、卵黄が原因の消化管アレルギーは、乳児期後半から幼児期早期にかけて大半が発生します。これに対して、魚や貝類が原因の患者の発症時期は遅く、幼児期から学童期にかけてとなります。卵黄による消化管アレルギーの治癒後に、ホタテ貝による消化管アレルギーを発症した症例も報告されています。


 固形食品による消化管アレルギーの症状は、ほとんどが嘔吐であり、この病型はFPIES(food protein-induced enterocolitis syndrome)と呼ばれます(→消化管アレルギーの病型と診断基準)。嘔吐は食物摂取後1~4時間ほどして発生します。新生児・乳児消化管アレルギーにしばしばみられる血便はほとんどみられません。また、即時型食物アレルギーにみられるような蕁麻疹などの皮膚症状や、咳、呼吸困難などの呼吸器症状もみられません。

 検査データでは、食品に特異的なIgE抗体は多くの場合、陰性です。新生児・乳児消化管アレルギーでは、牛乳に対する細胞性免疫検査(→ALST(アレルゲン特異的リンパ球刺激試験))が陽性になりますが、固形食品では、今のところ卵白しか検査できません。鶏卵による消化管アレルギーでも卵黄が原因の場合は、卵白ALSTは役に立ちません。一部パッチテストが有用な場合もありますが、基本的に検査で原因食品を推定することは容易ではありません。

 診断は、特定の食品を与えた場合のみ繰り返し嘔吐がみられるというエピソードと、その食品を用いた経口食物負荷試験で症状が再現されることに基づいてなされます。食物摂取後6時間の血液検査では、好中球と呼ばれる白血球の一種が明らかに上昇するのが数少ない検査的特徴の一つです。

 予後についてはまだ限られた情報しかありませんが、早ければ発症後1年程度で、多くは2~3年程度で治癒するようです。ただし、魚貝類はもう少し時間がかかるようで、発症後10年たっても治癒していない症例が報告されています。

 表1.固形食品による消化管アレルギーの特徴
  固形食品による
消化管アレルギー
新生児・乳児
消化管アレルギー
 原因食品  固形食
(卵黄、小麦、大豆、
魚貝類等
 乳児用ミルク
(牛乳、母乳、大豆乳)
 発症時期 乳児期後半、幼児期  新生児期、乳児期早期
 症状  嘔吐が主  嘔吐、下痢、血便
 皮膚症状
呼吸器症状
 なし  なし
 IgE抗体  多くは陰性  多くは陰性
 ALST 卵白以外は検査不能   牛乳に陽性
 食物負荷後
好中球上昇
 あり  あり
 末梢血
好酸球上昇
 なし  あり(一時的)


     
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2021年10月21日更新
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