概念

 
消化管アレルギーは、嘔吐や下痢、血便などの消化管症状を主症状とする食物アレルギーの特殊型です。よく知られている即時型食物アレルギーと比べて、IgE抗体が陰性であること、呼吸器症状や皮膚症状がみられないことなどの違いがあります。


分類・機序・病型

 国際的には、FPIES(food protein-induced enterocolitis syndrome)と呼ばれています。機序は、アレルゲン特異的リンパ球の過剰反応による、細胞依存性アレルギーと考えられています(→細胞依存性アレルギー)。新生児から成人まで発症しますが、年齢により病型や原因食品が異なります。


新生児・乳児消化管アレルギー

 最も早く発症する新生児・乳児消化管アレルギーは、生直後から乳児期にかけて発症します(→新生児・乳児消化管アレルギー)。症状は、軽度の血便のみの軽症型から、下痢が続いて体重増加不良となるもの、激しい嘔吐で脱水やショックに陥るもの、さらに発熱を伴い、重い細菌感染症と似た経過をとる敗血症型まで多岐にわたります。原因食品は、ほとんどが牛乳を原料とするミルクです。わが国では、最近、「新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症」と呼ばれることもあります。速やかに診断し、原因食品を除去すれば、その後は無症状で、正常な発育が得られます。通常、2〜3歳までに治癒します。


アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)

 新生児・乳児消化管アレルギーの診断には、細胞性免疫検査法であるアレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)が参考情報として役立ちます(→ALSTによる新生児・乳児消化管アレルギーの診断)。アレルギーを起こす物質(アレルゲン)でリンパ球を刺激すると、アレルギー症状がある患者では増殖反応が誘導されます(→ALSTの概要)。しかし、この増殖反応は弱いので、正確に検出するのは容易ではありません。ALSTでは、いくつかの特別な工夫を加えることにより、それを可能にしています(→ALSTの測定方法)。


注意すべき病型

 頻度は低いのですが、母乳が原因で新生児・乳児消化管アレルギーが発症することもあります(→母乳栄養児の消化管アレルギー)。母乳は安全性についての信頼度が高く、それゆえ盲点になる可能性があるので注意が必要です。また、未熟児に発症することもありますが、その場合は、生理的未熟性による消化管症状と区別しにくいため、診断がより困難になります(→未熟児の消化管アレルギー)。


固形食品による消化管アレルギー

 離乳食開始以降は、穀物、鶏卵、魚貝類などの固形食品が主な原因となります(→固形食品による消化管アレルギー)。症状は主に嘔吐であり、全く健康な乳児が特定の離乳食品を摂取するたびに嘔吐することで気づかれるのがよくあるパターンです。興味深いことに、代表的な原因食品は国ごとに違います。


卵黄が原因の消化管アレルギー

 わが国では、最近、鶏卵が原因の消化管アレルギー患者が増えています。IgE抗体が陰性の典型的な消化管アレルギーは、主に卵黄が原因となります(→卵黄による消化管アレルギー)。発症時期は乳児期後半が多く、離乳食で卵黄や全卵を与えた後、2時間前後で嘔吐がみられます。このような患者の多くは、卵白では症状がなく、普通に食べることができます。


卵白による消化管アレルギー様症状

 鶏卵の卵白は、即時型食物アレルギーの代表的な原因食品ですが、一部に、IgE抗体陽性でありながら、消化管アレルギーと同様、消化管症状のみ呈する患者がいます(→卵白による消化管アレルギー様症状)。即時型食物アレルギーと消化管アレルギーの間で、相互に移行する症例も報告されています。両者の間には、相違点とともに、何らかの共通点があるのかもしれません。


成人の消化管アレルギー

 最近、成人にも消化管アレルギーが発生することが知られるようになりました(→成人の消化管アレルギー)。通常、食後数時間で嘔吐や腹痛などの消化管症状がみられる場合は、食中毒が疑われます。しかし、同じ食品で繰り返し症状が発生する場合は、消化管アレルギーも考慮する必要があります。


好酸球性胃腸炎との関係

 血便を呈する新生児・乳児消化管アレルギー患者では、しばしば腸粘膜の好酸球が増加しており、好酸球性胃腸炎との類似性が注目されています。しかし、腸粘膜の好酸球が増加しているのは比較的軽症の患者に限られ、重症患者では腸粘膜に好酸球増加がみられないことが報告されています。その他、両者の間には、診断や治療、予後などにも大きな違いがあります(→好酸球性胃腸炎と消化管アレルギー)。

 
 
 

 
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