卵黄による消化管アレルギー
 

概要

 近年、卵黄による消化管アレルギーの患者が急速に増えています。2021年には、消化管アレルギーの原因食品の中で、卵黄が牛乳を押さえ、最も頻度の高い食品となったことが報告されています(→固形食品による消化管アレルギー)。症状は主に嘔吐で、摂取後1〜4時間後にみられます。

 卵黄による消化管アレルギー患者では、卵黄のみにアレルギー症状がみられ、多くの場合、卵白は摂取可能です(Shimomura M et al. Allergol Int 2019, 68, 110-111)。日常しばしば遭遇する鶏卵の即時型食物アレルギーでは、卵白が主な原因であり、この点で両者は好対照です。興味深いことに、まれに、卵黄では消化管症状、卵白では皮疹や呼吸器症状などの即時型食物アレルギー症状を呈することもあるようです。
 


症状


 症状は主に嘔吐で、FPIES (food protein-induced enterocolitis syndrome)という病型に相当します(→消化管アレルギーの病型と診断基準)。離乳食で卵黄を与えた後、数時間後に嘔吐することで気づかれるのが一般的です。最初から嘔吐することもありますが、初めの1〜2回は何ともなく、その後に嘔吐が始まる場合もあります。よく知られている即時型食物アレルギーでは、初回から症状が出るのが普通なので、食物アレルギーらしくない印象を持たれることがあります。

 また、即時型食物アレルギーの症状としてよく知られている蕁麻疹などの皮疹がみられないため、はじめからアレルギーを疑われることは、ほとんどありません。一時的な体調不良が原因ではとみなされることも多いようです。その後も、2回、3回と与えられ、その都度嘔吐するので、いよいよ困って、その段階で専門医を紹介されるのがよくあるパターンです。


 医師は、食物アレルギーを疑ってアレルギー検査を行いますが、多くの場合、IgE抗体は卵白、卵黄とも陰性であり、診断に迷います。ここでIgE抗体陰性の消化管アレルギーを思いつけばよいのですが、最近までこのような症例の報告がなく、情報不足のため診断は容易でなかったと思われます。

 現在は、学会などで、卵黄による消化管アレルギーの情報が増えていますので、専門医であれば見逃すことはないでしょう。


原因となる成分

 現在、卵黄中のどの成分が消化管アレルギーを引き起こしているのか、わかっていません。症例数が増えるにつれ、アレルギーの原因物質を明らかにするための研究も始まっています。


診断

 診断は、病院受診に至るまでの過去のエピソードと、経口食物負荷試験で症状の再現性を確認することにより確定します(→消化管アレルギーの病型と診断基準)。もちろん、偶発的な感染症の合併や、先天的な腸管の異常など、アレルギー以外の疾患でないことを確認しておく必要があります。

 血液検査では、食物負荷後に血液中の好中球数や、CRPというたんぱく質の量が上昇することが参考になります。最近、血液中のTARCという特殊なたんぱく質が増えることも報告されています。


経口食物負荷試験

1)全般的注意事項

 食物負荷試験は、入院して行う方が安全です。1回目に与える量は、症状が出た時の量より少なくし、強い症状が出ないように注意します。

 食物負荷試験で誘発される嘔吐は、通常、1回または2〜3回反復した後、自然に治まります。しかし、程度が強かったり、長引く場合は点滴などで治療する必要があります。

 食物負荷試験は、卵黄と卵白に分けて、それぞれに実施する必要があります。消化管アレルギーでは、卵黄の方がリスクが高いので、卵白のみの負荷試験では、正しく診断できません。逆に、卵黄のみの負荷試験では、食べられるかもしれない卵白まで、過剰に制限してしまう恐れがあります。

2)卵黄負荷試験

 現在、卵黄の経口負荷試験に定まった方法はありません。一つの方法として、初回は固ゆで卵の卵黄を2g程度与え、24時間観察します。多くはこの程度の量で、1〜4時間ほど後に嘔吐が誘発されます。

 微量の卵黄で症状が出現している場合は、初回負荷量を0.5g程度と少なくする方が安全です。反応がないのを確認できれば、翌日に2gの卵黄を負荷します。

 2gで症状がない場合は、翌日に10g程度を与えて様子をみます。これで症状がない場合は、ほぼ陰性と言えます。

 初回負荷量や1日毎の増量幅を少なくすると安全性は高くなりますが、入院期間が長くなり、ご家族の負担が大きくなります。安全性と効率に加え、ご家族の希望にも配慮しながら、実際の負荷試験の手順を決定します。

3)卵白負荷試験

 卵白の負荷試験は、固ゆで卵の卵白部分を用い、1日目2g、2日目10g、3日目卵白1個分(30〜40g)というのが一つの目安です。

 ただし、卵白に対するIgE抗体が陽性で、即時型食物アレルギーの可能性がある場合は、さらに少ない量からスタートします。


食物制限

 卵黄による消化管アレルギーが確認されれば、卵黄の摂取を制限します。

 卵黄が負荷試験陽性であっても卵白が負荷試験陰性であれば、当然ながら卵白は摂取することができます。ゆで卵や目玉焼の白身、卵黄が入らないように分取した卵白を使った料理や加工品は食べられますので、うまく工夫すると、窮屈な思いを少し緩和することができます。


 診断確定後は、半年〜1年毎に耐性獲得(治癒)の評価のための食物負荷試験を実施します。負荷試験で誘発症状が見られなくなれば制限を解除します。


予後

 予後については、まだ十分な情報がありません。早ければ1歳で治癒することもあり、3歳までには多くの患者が治癒するようです。比較的治りやすいアレルギー疾患と言えます。




 
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  令和3年10月22日更新   
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