消化管アレルギーの病型と診断基準


1. 病型分類


1)わが国の分類


 わが国では、新生児期から乳児期早期に発症する非IgE依存性食物アレルギーとして、「新生児・乳児消化管アレルギー」が定義されています。「新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症」と呼ばれることもあります。

 最近、離乳期以降に発症する固形食品による消化管アレルギー(→固形食品による消化管アレルギー)、特に卵黄による消化管アレルギー患者(→卵黄による消化管アレルギー)の報告が増えています。そのような、乳児期後半から年長小児の症例まで含めた分類は、まだ作成されていません。

2)米国の分類

 米国では、消化管アレルギーは、非IgE依存性消化管食物アレルギー(non-IgE-mediated gastrointestinal food allergy)と定義されています。症状により3つの病型に分類されています。


 FPIES(food protein-induced enterocolitis syndrome)は、主に嘔吐と下痢を呈する病型です。FPIAP (food protein-induced allergic proctocolitis)は、血便が主症状で、嘔吐は見られません。もう一つ、慢性の下痢と発育障害を主症状とするFPE(food protein-induced enteropathy)という病型がありますが、頻度が低く、十分な情報が得られていません。
 
  表1. 米国での消化管アレルギーの分類
 
   FPIES FPIAP 
症状 嘔吐
下痢
血便


±


 発症年齢  乳児期以降  生後6か月未満
 原因食物  牛乳、大豆、
 穀物、等
 牛乳、大豆
特異的IgE抗体  4~30%  なし
 FPEは頻度が低く、情報量が少ないため除外している

 消化管アレルギー患者は、多くの場合、食物特異的IgE抗体は陰性です。しかし、一部に、低レベルのIgE抗体が陽性の症例がみられます。このような症例も、皮膚や呼吸器など、即時型食物アレルギーの症状がない場合は、消化管アレルギーとして扱います。IgE抗体陰性の典型的(typical)症例と区別する必要がある場合は、非典型的(atypical)症例と呼ばれます。


2. 診断基準

1)従来からの診断基準


 新生児・乳児消化管アレルギーは、表2に示す基準により診断されます。これは、1980年代から国際的に用いられている診断基準に準拠したものです。

  表2.新生児・乳児消化管アレルギーの診断基準   
   
 臨床所見 1)原因食品を摂取後に消化管症状が出現する
2)原因食品を止めることにより症状が改善・消失する
 (除去試験陽性) 
3)原因食品を用いた食物負荷試験で症状が再現される
 (負荷試験陽性)
 確定診断  臨床所見をすべて満たし、除外診断に該当しないもの
 除外診断 1)感染症や外科的疾患、慢性炎症性腸疾患など
2)血便の場合、ビタミンK欠乏症や血友病など
3)下痢の場合、糖や脂肪の吸収障害など
 検査所見  牛乳蛋白が原因の場合、ALSTが陽性となることが多い
 
     

 まず、臨床所見 1)の原因食品を与えた後、嘔吐や下痢、血便などの消化管症状が出現することに気づくことが必要です。2)の原因食品を止めることにより症状が改善・消失することが観察されれば、さらに本疾患の可能性が高くなります。なお、この項目は、原因食品の除去により、以降症状が再燃することがなく、順調な成長・発育が得られることも含みます。

 診断を確定するためには、3)の食物負荷試験が必要です。ただし、意図せず同じ食品を何回も与えて、その都度、同じ症状が再現されたエピソードがあるなど、負荷試験と同等の臨床所見がある場合は省略することができます。

 ALSTは有用な参考情報として利用することができますが、それのみで診断を確定することはできません。

2)最近の国際的な診断基準

 最近、米国の専門家委員会から新しい診断基準が提唱されました( J Allergy Clin Immunol 139;1111-1126, 2017)。これは、(A)食物摂取後1~4時間後の嘔吐を主基準とし、(B)これに加えて以下の副基準を三つ以上満たせば診断可能とするものです。食物負荷試験は、これらの基準で明確に診断できないときのみ実施することとされています。

 副基準には、1)原因食品を食べた後嘔吐するエピソードが2回以上ある、2)そのほかの食品を食べた後1~4時間で嘔吐したことがある、3)強い倦怠・脱力状態、4)顕著な蒼白、5)救急外来受診が必要な状態、6)輸液が必要な状態、7)24時間以内の下痢、8)低血圧、9)低体温、が含まれます。

 これらの副基準は、1)を除き、消化管アレルギーに特徴的にみられるものではありません。また、3)~6)の判定には具体的な基準がなく、主観的要素に影響される余地があります。9)の低体温はわが国ではほとんど報告がなく、むしろ発熱が見られます。

 現在、この新しい診断基準が、徐々に国内の診療にも浸透しつつあります。その有効性や有用性については、さらに検証していく必要があります。

 
     
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  2021年10月23日 更新  
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