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成人の消化管アレルギー


 消化管アレルギーは、主に乳児や幼児に発生する疾患で、通常、成長に伴って数年の間に軽快・治癒していきます。それでは、成人の患者はいないのかというとそういうわけではありません。まれではありますが、少なからぬ数の報告があります。

 最初に報告されたのは50歳代の男性で、ホタテ貝やあさりを摂取後数時間で嘔吐や下痢が発生するエピソードを繰り返していました。それ以外の食品ではこのような症状がみられません。成人後に発症し、20年以上症状が続いていました。ずっと消化管アレルギーとは思わず、食中毒と考えていたようです。

 相談を受けた施設では食物アレルギーを疑い、食物特異的IgE抗体について検査しましたが、すべて陰性でした。その後、確認のためホタテ貝を用いて経口食物負荷試験を実施したところ、食べて1時間半後に嘔吐、次いで血性下痢がみられました。血液検査では白血球の一種である好中球が著明に増加していました。このような所見から消化管アレルギー(FPIES:food protein-induced enterocolitis syndrome)と診断されました(Fernandes BN, etal, JACI 2012,130,1199-2000)。

 その後、医療機関のデータベースの検索を基にした比較的症例数の大きな論文が3本発表されています。検索の条件は、特定の食品に限って、摂取後数時間で消化管症状(嘔吐、腹痛、下痢)のみ呈するエピソードを複数回以上繰り返していること、その食品に対するIgE抗体は陰性であること、初めての症状の発生が成人になって以降であることなどです。
 
 合計の症例数は76名に及びます。いずれも女性の数が圧倒的に多く、男女比は12対64でした。原因食品は、いずれの論文でも貝類、魚類、甲殻類が多く、次いで鶏卵や牛乳製品、小麦ですが、これらの頻度は論文により差があります。ナッツ類や野菜類もまれに原因になることがあるようです。

 特徴的なのは、発症から診断まで数年以上、場合によっては10年以上かかっているということです。これは、一般市民、医療者ともに消化管アレルギーが成人に発生するということを知らないからだと思われます。

 わが国では、2000年ごろまで新生児・乳児消化管アレルギーの情報が乏しく、診断がつくまで数カ月かかることもまれではありませんでした。その間、発育障害が進展し、ほとんどの症例が体重増加不良を伴っていました。2010年前後より、乳児の消化管アレルギーの情報が普及し、それ以降は診断が遅れて発育障害を来す頻度が激減した経緯があります。

 今後、成人の消化管アレルギーについても情報が増えていくものと思われます。それにより、原因不明の消化管症状で長く苦しむ成人患者の数が減っていくことを期待したいと思います。
 

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